高張力鋼( High Tensile Strength Steel)は合金成分の添加、組織の制御などで、一般構造用鋼材よりも強度を向上させた鋼材です。
一般構造用圧延鋼材は引張強度のみが規定され、最も一般的なSS400材の引張り強度の保証値が400 MPaです。
どれだけ強いものを高張力鋼と定義するのかは国や鉄鋼会社によって違いはありますが、
概ね490 MPa程度以上のものからが高張力鋼と呼ばれます。引張強度が590 MPa、780 MPa程度のものが主流です、
近年は1,000MPa(1 GPa)以上、1,500Mpaのものもありますが、これは超高張力鋼とも呼ばれます。
自動車の部材などを設計する際、同じ強度を確保するに当たって、一般鋼材を用いる場合に比べて薄肉化できるため、
フレームなどの主要構造部材の軽量化に貢献しています。また、1950年代以降の鉄道車両にも多用され、車体の軽量化が図られてきました。
鉄鋼メーカーのシミュレーションでは、比強度が一般鋼材よりも大きいため、アルミニウム合金を用いた場合よりも軽量化が可能であり、
さらにコストも低いことから、近年の車体のハイテン化率は急速に伸びています。